とけあう旨み、時をまとう ~ハマオカ自慢の汐ぶり ~
海が荒れ、雷が鳴る「ぶり起こし」の季節。
冬の始まりを告げるそんな時期に、ぶりの仕込みがはじまります。脂をたっぷりまとった天然の寒鰤(かんぶり)に、塩をふり、塩水に浸し、浜の風に干して、静かに、静かに、そのときを待つのです。

完成は、夏の盛り。半年以上、冷凍熟成させた「汐ぶり」は、味が馴染み、角が取れ、旨味が深く、やさしくなっていきます。
富山の人は、ずっとフレッシュなぶりを愛してきました。しかしハマオカは、創業当初からこの“熟成のうまみ”にこだわり続けてきました。

変わらないレシピ、進化する技術。

江戸の昔、都への献上品として生まれた汐ぶり。ときが流れて、時代が変わっても、その味には変わらぬ誇りが宿っています。
ハマオカでは、創業から七十余年。潮風に磨かれた技と、日々の手仕事を大切にしながら、今日も、ぶりと向き合っています。
塩の入り方、身の締まり、わずかな気温の差——魚たちはみんな、少しずつ違う顔をしています。だからこそ、ハマオカでは一尾ずつにナンバリングをし、個体の状態を、丁寧に見つめながら管理しています。そうして何年もかけて蓄えたデータと経験が、そのぶりに最適なレシピを教えてくれます。

最新の冷凍技術も、惜しみなく。伝統を守りながら、いま出来る最大限の美味しさを。
ぶりが浸かる塩水にも、魚津の名水を使っています。立山の雪解け水が、森をくぐり、10年かけて海底から湧き出す「魚津の水循環」。
海から、台所まで。きちんと、まっすぐ、おいしさを届けるために。手間を惜しまない理由は、たったひとつ。口に入れたとき、ふっと笑顔になってほしいから。
「おいしいね」その一言のために、私たちは今日も、汐ぶりをつくっています。
地形が、旨味をつくる。
富山湾の奥行きは、わずか25km。でも、約4000メートルの高低差を持つ、山から海へのダイナミックな地形が、この海の特異な水質を生み出します。
低い水温の日本海固有水。高い水温の対馬暖流水。そのふたつが出会う海こそが、魚たちにとって理想の住処。春にはますが泳ぎ、冬にはぶりが太る。この地理的条件こそが、ハマオカの汐ぶりを、世界に誇れる一品にしているのです。
人と自然が、混ざりあう味。
汐ぶりをつくるということは、自然とともに暮らし、季節の移ろいを感じながら、その恵みに感謝し、手を動かし続けるということ。
毎日ちがう海の表情。一尾一尾に違う魚の個性。それでも変わらないのは、「おいしいを届けたい」という気持ち。人と自然が混ざりあってきたこの場所で、ずっと守り続けてきた味だからこそ、誰かの心に、ふっと届く瞬間があるのだと思います。
とけあう旨み、時をまとう

あてた塩が熟成によって丸みを帯びた「寒の汐ぶり」。大根おろしとすだちを添えれば、旨味と爽やかさが食欲をそそります。
いつもより、ちょっとだけゆっくりとした食卓を。熟成をまとった汐ぶりと一緒に、その豊かさを、ぜひ味わってみてください。